少年の内に秘めた狂気と切なさ

音楽

 最近、私がヘビーローテーションで聴いているのが、世界三大バンドとして知られる「THE WHO」のアルバム「Quadrophenia(邦題:四重人格)」である。1973年発売なので、もう50年以上も前の作品だ。この作品は、架空の人物であるジミーの多重人格と精神的な葛藤を軸に展開される。詳しくはWikipediaの「四重人格」や「さらば青春の光 (映画)」の項を参照して欲しい。いずれにしても、登場人物のジミーが「THE WHO」のメンバー四人の性格を合わせ持っていることは、アルバムジャケットの中で、彼がまたがっているスクーターのバックミラーに、各メンバーの顔が写っていることからも自明だ。

 私が最初にこのアルバムを聴いたのは、17歳の頃(1984年)だったと記憶している。40年も前の話になるが、作品中のジミー青年とそんなに変わらない年頃だったが故に、この作品の楽曲、物語性、アルバムジャケット、付録の40ページにも及ぶ写真集の全てに共感出来た。今でもこの作品を聴くと、漠然とした焦燥感と光と希望に満ち溢れた、あの、10代後半の少年に特有の空気が蘇るのである。

 特にアルバム一枚目(この作品は二枚組)の三曲目に収録されたインストロメンタル・ナンバーで、このアルバムのタイトルチューンでもある「Quadrophenia」は秀逸だ。時に激しく、時に甘く、時に切なく、時に力強い、ジミー青年の内面がよく表現されている。Youtubeにも音源が上がっていたのでここに貼っておく。

 ギタリストであり、グループのリーダーでもあるピート・タウンゼントのギターサウンドは、繊細でかつ荒々しい。(のちのライヴではピートではなく別のギタリストがソロを弾いていたという説もあるが)

 私がこのアルバムを初めて聴いたミッド・エイティ(1980年代中盤)といえば、日本が栄華を極めたバブルの直前、ちょうど上り坂の頂上の少し前あたり。私自身が青春のど真ん中にいたということもあり、全てのものが光り輝いて見えたあの時代。ただし光あるところに影ありで、その光と影が混じり合った独特の空気を思い出すのである。

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